| 正直さと誠実さはまるで違う / 大抵は汚泥が詰まっている / まなざしに止まない雨のあをあをと / 僕が銀の涎を垂らせば彼女は赤い血を垂らす / 厭人病者は瞳に凶器を光らせ / とこしなえを泳ぐ心音は僕らの死に逝く速さで / 馬鹿みたいな生命をこの身に受けた日から(弁解がましく問わず語り) / 私達は他人の苦痛に、一方的に、共感する / 僕以上の異常者を君に委譲しよう / 饗宴に狂演する共演者 / 商店街あたりのブルースがまだ唇に乗っている間に / 何かが彼の脳髄を暗く和ませてくれるだろうか / 酒樽が凶器することもない黄昏れ / 森をうねらせる嵐も今日はなく / いつも積乱雲の膨大にみとれているふりをして真夏の演じられる世界からにげてきた / 埠頭は今日も怒涛だった / 馬蹄が石も釘も蹴り飛ばしてゆくように / 美しく浅い眠りに落ちる街 / 密室で育てたその観念 / 犠牲を淘汰と呼ぶその心 / 彼が立ち向かうべきまぎれもない眺め / 見た者、聞いた者、関わりのない遥か極地の生命にまで被害を及ぼすような、そんな盛大な死に方をしたいものだ /(同様の死が同様に転がっているだけ)/ 知らないところへ連れていく蝶のように初恋のように優しくしてよ / 神さまの色分けのせいで生まれた多くの悲劇 / 月が足裏を通るうす蒙い夜の海の集魚灯 / 短針が南を指して世界は影を作り始めた / 嘆くことすらその瞬間の最善の処置です / 水銀灯は珠繋ぎ、跪いてワルツを踊る / 美しいオフィーリア、水面にゆらめく花 / 手折られた小指のように哀絶していて / やわらかい形状をくりかえす鉱石 / なくしたものの名残がまだ色濃い / いかなる逡巡も思考もただ徒 / 菜の花の黄は残像を染める / かつて豊かに揺れた花群 / 消え去れやさしい面影よ / 夜への永久滞在は大罪 / 夜行人間の森の中 / 目蓋の裏の残滓 / 幸福の行進劇 / 聖書の罪重ね / 唇に毒 |